この記事は、内線規程――特に3110〜3165節――を改めて読み直しながら、「こういう整理の仕方もあるのではないか」と感じた点を、筆者なりにまとめたものです。
ここで紹介する内容は、あくまで私的な考え方の整理であり、これが唯一の正解というわけではありません。
内線規程の読み方には幅があり、現場ごとのルールや安全文化も存在します。
記事全体は少し長めですが、計装工事の視点から、金属管・電線・ケーブルの扱いをどう整理できるかを丁寧に説明しています。
結論だけを読むこともできますが、結論だけでは腑に落ちにくい部分もあるため、できれば全文を通して読んでいただき、「こういう考え方もあるのか」と感じてもらえれば嬉しく思います。
この記事の結論|目的で節を切り替える
こういう考え方もあるようです
内線規程 3110節は「電線を電線管に収める場合の選定条件」を扱った節であり、『ケーブルを管に通す場合の規定』を示したものではない、という考え方があります。
内線規程 3110節の位置づけ
3110節が扱っているのは、あくまで「電線を電線管に収める場合」の条件です。
主に次のような内容が示されています。
- 電線管に収める電線の種類
- 電線管の種類(G管、C管、合成樹脂管など)
- 電線管の内径と電線の占積率
- 曲げ半径
- 施工条件
つまり、3110節は 『電線』を管に通すときの基準をまとめた節 であり、『ケーブル』を管に通す場合の扱いを直接示した条文ではない という考え方です。
この視点に立つと、「ケーブルを管に通したら、それは3110節の『金属管工事』に該当するのか」という疑問に対して、少し違った見え方が生まれてきます。
では、ケーブルを管に通す場合は?
ケーブルは、外装(シース)によって機械的に保護された材料です。
そのため、「電線管にケーブルを入れる」という行為は、3110節が扱う『電線』とは別枠で考えるという立場があります。
内線規程はケーブルを管に通すこと自体を否定していません。
ただし、その際の占積率や曲げ半径などの判断は、3110節ではなく別の条文や一般的な原則によって行うことになります。
つまり、3110節は『ケーブルを管に入れるかどうか』を判断するための条文ではないという考え方です。
ケーブルは本来、そのまま施工できる材料
ケーブルはシースで保護されているため、裸の電線のように「必ず管に収めなければならない」という前提ではありません。
そのため現場では、「ケーブルは管に入れる必要がない」という考え方がよく見られます。
ケーブルを管に通すなら、それは『金属管配線』ではなく『防護管』
ケーブルを管に通す場合、それを 「電線を収めるための電線管」ではなく、ケーブルを追加で保護するための『防護管』として扱う」という整理の仕方があります。
この立場では、ケーブルを保護管に収める場合には 3165節(ケーブルの防護管の内径基準など)が適用される、という理解になります。
現場での『ケーブルを管に通す文化』の背景
筆者としては、ここで一度「なぜ現場ではケーブルを管に通すのか」を考えてみました。
最近の大型現場では電線管工事は減っていますが、ケーブルをそのまま施工できるにもかかわらず、あえて管に通すケースはいまでもよく見られます。
これは「規程で決まっているから」というより、現場の経験や慣習から生まれた文化として根付いている側面が大きいと感じています。
物理的な保護を強めたいという意図
ケーブルはシースで保護されていますが、次のような場面では追加の保護が欲しくなります。
- 傷つきやすい場所
- 施工後に他業種が触れる可能性がある場所
- 露出配線で見た目を整えたい場所
こうした状況では、管に通すことで安心感が増します。
「念のため管に入れておこう」という判断は、現場では珍しくありません。
仕上がりの見た目を整えたい
特に露出配線では、
- ケーブルがたわむ
- ルートが曲がる
- 壁面での存在感が大きい
といった理由から、管に通したほうが『きれいに見える』という考え方があります。
美観を重視する現場では、これが大きな理由になります。
既設配管を再利用するケース
リニューアル工事では、既に配管が敷設されていることが多く、「せっかく管があるなら、そこにケーブルを通そう」という判断が自然に行われます。これは非常に実務的で、現場ではよくある判断です。
現場独自の『ルール』
現場によっては、独自の基準が存在することもあります。
- 「ケーブルでも管に通すのがうちのやり方」
- 「露出は必ず管に入れる」
こうした「ローカルルール」が積み重なり、「ケーブルでも管に通す」ことが自然な判断として受け継がれている
という側面があります。
内線規程の構成から見た別の整理方法
ここからは、私が内線規程を調べていく中で「こういう整理の仕方も成り立つのではないか」と感じた内容を紹介します。
内3110〜3145節は「絶縁電線を電線管に収める工事」が前提
内線規程の3110〜3145節を読むと、冒頭から次のような書き方が続きます。
- 「金属管配線には…」
- 「合成樹脂管配線には…」
- 「この配線には絶縁電線を使用すること」
この構成から、3110〜3145節は 『絶縁電線を電線管に収める工事』 を前提に書かれている
という整理ができます。
ケーブルについては「3165節」にまとめられている
一方で、ケーブルについては 3165節 にまとめられています。
題目には『ビニル外装ケーブル配線、クロロプレン外装ケーブル配線、ポリエチレン外装ケーブル配線』
と明確に示されています。
さらに文中には、ケーブル専用の基準が並びます。
- 「この節において『以下ケーブル』というと…」
- 「ケーブルを適当な防護措置を講ずる場合は、この限りでない」
- 「防護管の内径はケーブル仕上り外径の1.5倍以上」
- 「引き替えが容易なものは1.5倍未満でもよい」
これらは、電線管に絶縁電線を通す3110節とは明確に別枠の扱いです。
ケーブルを管に通すなら、3165節(防護管)の考え方が近い?
この構成を踏まえると、ケーブルを管に通す場合は、むしろ3165節(ケーブルの防護管)に該当するのではないか
という整理も成り立ちます。
つまり、
- 3110〜3145節 → 電線を電線管に収める工事
- 3165節 → ケーブルを保護するための防護管
という読み方ができる、という視点です。
3110節と3165節をどう読むか
しかし、3110節の題目は 「金属管配線」。
条文中には電線だけでなく通信ケーブルも登場します。
この構成から、3110節は「電線そのもの」ではなく「電線管という工法」を扱った節という読み方ができます。
つまり、材料名(電線/ケーブル)で区別するのではなく、『金属管配線という工法』 をまとめた章という整理です。
そのため、条文中に「電線」と書かれていても、必ずしも「絶縁電線だけ」を指しているわけではなく、文脈によってはケーブルを含む広い意味で使われている場合があります。
なお、内線規程(JEAC8001)は著作物であるため、条文そのものをここで全文引用することはできませんが、定義の構造からこのような読み取りが可能になります。
ケーブルを管に入れる=常に防護管扱いではない
一方で、3165節の題目は、「ビニル外装ケーブル配線、クロロプレン外装ケーブル配線又はポリエチレン外装ケーブル配線」となっており、3165節は「ケーブル配線」を扱う章 です。
ここでは、
- ケーブルは基本的にそのまま施工できる
- ただし必要な場所では防護措置を講ずる
という考え方が示されています。
「ケーブルを管に入れた=すべて防護管扱い」ではない
この構成から分かるのは、ケーブルを管に入れたからといって、すべてが防護管扱いになるわけではないということです。
重要なのは、次のような状況です。
- ケーブル単体では不適切な場所
- 追加の保護が必要な状況
こうした場面において、必要な部分だけを保護するために管を使うという位置づけになります。
ケーブルは本来そのまま施工できる材料であり、管は「常に必要なもの」ではなく「必要な場所に追加する保護」という整理が自然だと感じています。
3110節は『金属管配線』を扱う節である
したがって、3110節は 「金属管配線」そのものを扱う節 であり、条文中で電線が例示されているか、通信ケーブルが登場するかといった
材料名の違いが本質ではありません。(前提は絶縁電線としていると考えられます)
さらに、この節には 解釈178 が付されています。
これは、3110節の適用範囲が「電線管という工法をどのように扱うか」に関するものであることを補足する役割を持っています。
つまり、解釈178条が付されていること自体が、
- 3110節は「金属管配線」という工法を扱う節である
- 材料名(電線/通信ケーブル)よりも工法の枠組みが重要である
という読み方を裏付けていると言えます。
以上を踏まえると、3110節は「金属管という工法をどう扱うか」を示した節であり、材料名の違いに振り回される必要はないという整理が成り立ちます。
電線管と防護管の違いを整理する
保護管は、3165節に示されているとおり「ケーブル配線で、必要な部分だけを保護するための管」という位置づけです。
そのため3165節では、内径はケーブル外径の1.5倍以上という基準が示されています。
さらに3165節では、使用する管の種類(電線管・PF管・ガス管など)を限定していません。
目的が「防護」である以上、適切に保護できる管であれば種類は問わないという考え方が読み取れます。
防護管は「無制限の管路」ではない
3165節の基準は、あくまで『必要な部分を保護するための管』としての条件です。
したがって、防護管は次のような「無制限の管路」として扱えるわけではありません。
- 何メートルでも通してよい
- 何度曲げてもよい
- 30mを超えてもプルボックス不要
- 曲げ角度や曲げ回数の制限は一切なし
こうした扱いは、防護管の趣旨から外れてしまいます。
防護ではなく「金属管配線」として扱うべき状況
もし、
- 長距離を通している
- 多数の曲げがある
- 配線経路そのものを管で構成している
といった状況であれば、それはもはや「保護」ではなく「金属管配線」という工法として扱うべきであり、3110節(金属管配線)の基準が適用されるという整理が自然です。
防護管は「必要な部分だけ」を守るためのもの
つまり、防護管は配線経路そのものを構成するための管ではなく、必要な部分だけを保護するための管という位置づけです。
3165節の「1.5倍」という基準だけを根拠に、長距離・多曲げの管路を保護管扱いすることはできない、ということになります。
目的で節を切り替えるという考え方
内線規程の3110節は「金属管配線」となっていますが、実際には 『絶縁電線を金属管に通す工事方法』を前提にした節 です。
一方で、ケーブルは3165節で まったく別の体系 として扱われており、金属管にケーブルを入れる場合でも 占有率方式ではなく、外径×1.5倍方式 を用いるという解釈があります。
金属管の使い方で適用する節が変わる
金属管を『配線ルート』として使う→ 3110節
金属管を『ケーブルの保護』として使う→ 3165節
同じ金属管でも、目的によって適用する節が変わるという考え方です。
電気工事と計装工事では『配管1本あたりの思想』が違う
電気工事(電力系)
- 1配管=1系統(1ケーブル)が基本
- ケーブルが太く、発熱も大きい
→ 1.5倍方式が合理的
計装工事(通信・制御系)
- 1配管=複数ケーブルが当たり前
- 細い通信ケーブルを束ねる文化
→ 占有率方式の方が実務に合う
この「配管1本あたりの思想の違い」が、3110節(占有率)と3165節(1.5倍)の使い分けの背景にあります。
計装工事が占有率を使ってきた理由
- 細い通信ケーブルを複数本まとめる文化
- 熱の発生が小さい
- 3110節にも通信ケーブルの記載がある
- 現場では占有率の方が合理的
つまり、計装は『占有率文化』、電気工事は『1.5倍文化』という『世界の違い』があるだけとも言えます。
目的で節を切り替えるという整理
金属管を 何の目的で使っているのか によって節を切り替える。
これは、内線規程の構造にも矛盾が少なく、現場の安全性も確保できる合理的な運用だと感じています。
計装工事の視点から見た『節の使い分け』の結論
ここまで紹介したのは、あくまで私なりの整理です。
内線規程の読み方には幅があり、現場ごとのルールや安全文化も存在します。
そのうえで、計装工事を中心にやってきた立場からまとめると、次のような結論になります。
- 金属管を何の目的で使うのかによって、3110節と3165節を切り替える。
- 計装工事で通信ケーブルを金属管に通す場合、3110節には通信ケーブルに関する記述(3110-16、解釈189)が含まれているため、配線ルートとして金属管を使用する場合は3110節の占有率による整理が適用されます。
- ただし最終判断は、現場の安全文化・監督や元請の方針に従うことが大切。
現場では、
- 「この現場ではどう扱うのか」
- 「監督や元請はどう判断しているのか」
といった「現場固有のルール」が必ず存在します。
そのため、最終的には 必ず現場で確認すること が欠かせません。
この記事が、電線・ケーブル・管の扱いで迷ったときの「一つの視点」として役立てば嬉しく思います。