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計装工事で使うケーブルラックの選定方法

 ケーブルラックの幅ってどうやって決めるの?そんな疑問に、国交省の基準をもとにわかりやすく解説します。

 内線規程には、ケーブルラックの選定方法に関する具体的な記載はありません。しかし、国土交通省が定める「公共建築設備工事標準図」および「公共建築設備工事標準仕様書」 には、ケーブルラックの幅を算出するための公式が明記されています。

公共基準に基づく選定のポイント

 これらの基準を参考にすることで、適切なケーブルラックの幅を設計し、安全かつ効率的な配線ルートを確保 することが可能です。特に以下の点に注意する必要があります。

ケーブルの種類と本数:ラックに収めるケーブルの外径や数量を考慮し、適切なサイズを選定。
将来の増設を考慮:余裕を持った設計をすることで、追加工事の手間やコストを削減可能。
支持間隔と耐荷重:ラックの材質に応じた適切な支持間隔を確保し、安全性を維持。

 ケーブルラックとは、大量の電線やケーブルを安全かつ整理して敷設するための金属製の棚状部材です。建物や施設の電気配線でよく使われ、特にケーブルの本数が多い場所で活躍します。

🔧 主な用途と設置場所

  • 工場・プラント:動力ケーブルや制御ケーブルの敷設
  • 駅やトンネル:照明・通信・監視用ケーブルの整理
  • オフィスビル・病院:天井裏や電気室での配線整理
  • 橋梁や立体駐車場:屋外での耐候性が求められる場所

🧱 主な種類

種類特徴
はしご形軽量で施工しやすく、ケーブルの固定も簡単。下からケーブルが見える。
トレー形底面が板状で、ケーブルが隠れるため美観に優れる。
立ち上がり用上下階をまたぐ配線に使用。

🧲 材質の例

鋼製(亜鉛メッキ):耐久性が高く、屋内外で使用可

  • ステンレス製:腐食に強く、屋外や湿気の多い場所に最適
  • アルミ製:軽量で施工性が良い

 ケーブルラックは、電線管では対応しきれない大量のケーブルを効率よく、安全に敷設するための必須アイテムです。
もし施工方法や選定基準についても知りたければ、そちらも詳しくご案内できますよ!

計装工事におけるケーブルラックの選定方法

 ケーブルラックの幅は、敷設するケーブルの本数や外径、将来の増設を考慮して決定されます。一般的な計算式として、
📌 強電ケーブルの場合W ≧ 1.2 × [Σ (D+10) + 60] mm
📌 通信ケーブルの場合W ≧ 0.6 × {Σ (D+10) + 120} mm

 今回は 計装工事で使用するケーブルラックの選定方法 について解説します。計装工事では 通信ケーブルが主に扱われる ため、選定には W ≧ 0.6 × {Σ (D+10) + 120} mm の計算式を使用します。

 また、この計算式は 2段積み の場合を想定して算出されているため、設計の際にはラックの高さや耐荷重も考慮しながら適切な選定を行うことが重要です。

 「公共建築設備工事標準図」や「公共建築工事標準仕様書」には、ケーブルラックの積層数(段数)の明確な上限3段積に関する具体的な記載がない場合が多いです。しかし、実務では以下のような考え方が一般的とされています。

1. 構造強度と安全性
 ラックの許容荷重を超えないことが最優先の条件です。3段積以上になると、ラックのたわみ支持間隔の管理が重要となります。
支持間隔を短くする(例:1.5m以下)ことで、たわみを抑え、ラックの安定性を確保する設計が求められます。

2. 施工性と保守性
 段積みのケーブルは施工や保守が難しくなるため、作業スペースやアクセス性を十分に確保 することが重要です。

3. 電磁干渉(EMI)対策
 電源ケーブルと信号ケーブルの間で電磁干渉(EMI)が発生しないよう、物理的に離して敷設することが推奨 されます。
 強電ケーブルや電源ケーブルを敷設する際は、セパレーターを設置することで信号ケーブルとの干渉を防ぐ ことが推奨されます。これにより、ノイズの影響を抑え、安全かつ安定した配線環境を確保できます。

📌 実務上の対応
 標準図に明確な記載がない場合でも、構造的・安全的に問題がなければ 3段積以上の設置は可能です。
 ただし、ラックメーカーのカタログスペック(許容荷重・支持間隔)を厳守する ことが不可欠です。

ケーブルラック幅の選定式(例)

通信・計装ケーブル(2段積)の場合

ケーブルラックの幅は、以下の計算式に従って算出されます。

📌 W ≧ 0.6 × {Σ(D+10) + 120}

 この式は、通信・計装ケーブルを2段積みする場合を想定しており、適切なラックサイズを確保するための基準となります。

ここでの各変数の定義

  • W :ラック幅(mm)
  • D :各ケーブルの外径(mm)
  • +10 :ケーブル間のクリアランス
  • +120 :端部の余裕および将来の増設分

 数式における「∑(シグマ)」は、総和(そうわ)や合計を表す記号で、指定された範囲内の数値をすべて加算するという操作を意味します。

🔢 今回の式における「∑(D + 10)」の意味

 この部分は、敷設するすべてのケーブルの「外径 D に 10mm を加えた値」の総和を表しています。
 つまり、各ケーブルの外径に10mmのクリアランスを考慮した上で、その合計を算出する計算式です。

具体例で説明

例えば、5本のケーブルの外径 が以下のような場合を考えます:

  • D₁ = 8mm
  • D₂ = 10mm
  • D₃ = 12mm
  • D₄ = 10mm
  • D₅ = 14mm

 このとき、計算式は以下のようになります。

(8+10) + (10+10) + (12+10) + (10+10) + (14+10) = 104

 つまり、各ケーブルの外径に10mmの余裕を加えた値をすべて合計する という計算を行っていることになります。

📌 なぜ「+10」するのか?

 この数値は、ケーブル間のクリアランス施工時の余裕 を考慮したものです。
実際の施工では、ケーブル同士が密着すると発熱やノイズの影響を受ける可能性があるため、適切な間隔を確保して敷設する必要があります。

結果、計算式は以下のようになります:

0.6 × (104 + 120) = 134.4

 つまり、必要なケーブルラックの幅は 幅200mm(134.4mm 以上) となります。

📌 「0.6」を掛ける理由

ケーブルの配置効率と安全性を考慮した設計基準に基づいています。

 この係数は、二段積みの場合のスペース圧縮率 を示しており、ケーブルラックの幅を適切に抑えつつ、必要なクリアランスを確保 するために使用されます。

 一般的に、強電ケーブルは1段積みが推奨 されるため、1.2を掛ける計算式 が用いられます。一方で、通信・計装ケーブルは二段積みが可能 なため、0.6を掛けることで適切なラック幅を算出 する設計になっています。

 また、将来の増設や施工時の余裕を考慮 し、+120mmの余裕を加える ことで、適切なスペースを確保できるようになっています。

 一段積みでは 0.6を掛ける必要がありません
そのため、計算式は以下のようになります:

📌 104 + 120 = 224mm

 この場合、ケーブルラックとしては 300mm のサイズが必要 となります。

 将来の増設余裕をもっと加味したい場合は、+120の部分を変更することで調整可能です。

ケーブルラックのコスト削減!段積みの活用術

 ケーブルラックのサイズが大きくなるほど、コストも比例して増加 します。そのため、より経済的に運用する方法 として「段積み」が選択肢に挙がります。

電源・動力工事と計装工事の違い

 電源や動力工事では、放熱性の確保が重要 なため、基本的に段積みは行いません。一方、計装工事では主に通信ケーブルを扱う ため、ノイズ対策が重要 となります。そのため、適切な間隔や配置を考慮した段積み設計 が求められます。

ノイズ対策を考慮した段積みのポイント

電源ケーブルとの適切な距離を確保 → 信号線と動力線を分離し、物理的な距離を設けることで干渉を防ぐ。
シールド付きケーブルの使用 → 必要に応じて、EMI対策としてシールド付きケーブルを採用することで、高周波ノイズの影響を低減。
セパレーターの活用 → ケーブルラック内で適切な仕切りを設置し、各ケーブル間の干渉を防ぐ。

 このような設計を行うことで、ノイズの影響を最小限に抑えつつ、安全で効率的なケーブル敷設が可能 になります。計装工事では特に通信品質の維持が重要 なため、ノイズ対策を考慮したラック設計 を徹底することが求められます。

なぜ二段積みが経済的なのか?

 単純にラック幅を広げると、材料費の増加施工スペースの確保 が必要になります。一方で、ラックの許容荷重や支持間隔を適切に設計 すれば、200mm幅のラックを活用しつつ必要なケーブル容量を確保 できるため、無駄なコストを削減できます。

二段積み導入時のポイント

許容荷重を確認ラックメーカーのスペックを必ずチェック
支持間隔を調整たわみを防ぐため1.5m以下に設定するのが理想的
用途別の配線整理上段と下段でケーブル種別を分けることで保守性も向上

二段積みの活用でスペース効率とコスト削減を両立!

 限られたスペース内で効率的にケーブルを収納しながら、コスト削減のメリットを得るためには、段積みの活用が有効 です。適切な設計を行うことで安全性を確保しつつ、賢く施工 できるため、導入を検討する価値があります。

 実務では、ラックの許容荷重や支持間隔を考慮しながら、適切な積層数を決定することが一般的 です。ラックメーカーの仕様を確認し、安全性を確保した上で、二段積みや三段積みの設計を行うことが推奨 されます。

電磁干渉EMI対策(Electromagnetic Interference対策)とは?

 EMI(電磁干渉)は、電気・電子機器が発する電磁波が他の機器に影響を与える現象を指します。これを防ぐための対策がEMI対策です。

EMI対策の主な方法

シールド対策 → 金属ケースやシールド材を使用し、電磁波の漏れを防ぐ。
フィルタ対策 → ノイズフィルタを導入し、不要な電磁波を除去。
グランド対策 → 適切な接地を行い、ノイズの影響を低減。
ケーブル配置の工夫 → 信号線と電源線を分離し、干渉を防ぐ。

EMI対策は、通信機器や医療機器、産業機器など幅広い分野で重要視されています。

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